なぜ好待遇の職場でも新人は辞めていくのか?

組織

始めに

 現在の雇用状況は以前に比べ複雑化しています。特に、若年層たちが仕事を選ぶ基準は大きく変化しています。好待遇とされる職場でさえも、新人の離職が続く現象が見られます。これは大企業に顕著にみられる現象のようです。

 好条件であれば働き手は満足すると我々は考えます。しかし、現代の若年層は異なる価値観を持っています。彼らが離職する原因は「不満」ではありません。もっと根深い問題があります。

 本記事では、「なぜ好待遇の職場でも新人は辞めるのか?」について考えていきます。彼らが職場に求めるものは何かについて以下に見てみましょう。

本記事のポイント

若者の仕事の選択基準が大きく変わっている。好待遇な条件だけでは若者の離職を止められない。

若者が離職する理由は、「職場に対する不満」ではなく、「成長できないという不安」にある。

成長させるためには、「質的負荷(仕事の質を高めるストレス)」を上げる。しかし、「関係負荷(人間関係のストレス)」は意識的に減らすことが重要である。また、「量的負荷(仕事量によるストレス)」は相手のレベルに合わせて調整することが必要である。

若者は我々とは価値観が異なる。その価値観を受け入れ、それを発揮できるような環境を提供することで若者の離職は防ぐことが出来る。

学びを身に付けるために実践したいこと

難易度 1: 簡単に始められる行動

1. 関係負荷を改善するために、仕事中だけでなく休憩時間にも意識的に話す機会を持つ。

2. 自発的な社外研修やオンライン学習について可能な限りサポートする(時間/費用/機会の提供)。

難易度 2: 少し努力が必要な行動

3. 信頼を得るために日頃の行動を振り返り、改善し続ける(約束を守る、誠実に対応する、相手の意見を尊重するなど)。

難易度 3: 継続的な努力が必要な行動

4. 短期的な目標と長期的な目標の両方を考えさせる。定期的に振返りのフィードバックを行うことで、成長を実感させ、モチベーション維持を行う。

本記事で学んでほしいこと

 現在の雇用状況は過去に比べて複雑化しています。特に若年層の仕事に対する選択基準は大きく変わっています。以前は好待遇を提供すれば従業員の満足度を高められ、離職率を低下させることができました。しかし、現在のはこの方法は十分に機能していないようです。この現象は、特に大企業でも見られます。

 我々は一般的に、好待遇の職場条件(不満をなくす)で働き手は満足すると考えます。しかし、現代の若年層は異なる価値観を持っています。そして、彼らが離職する原因は「不満」ではありません。

 それではなぜ現代の若者は離職をしているのでしょうか?「不満」に代わる離職原因とは何でしょうか?以下、「なぜ好待遇の職場でも新人は辞めてしまうのか?」という点について考えてみましょう。

「不満」はないが、「不安」がある

 多くの企業は、従業員の不満を解消するために職場環境の改善に取り組んでいます。

 例えば、上司は部下に対して優しく接し、仕事量の負担を軽減するように努めています。これは、従来の価値観に基づけば良い職場を作る上では機能します。しかし、このアプローチが常に効果的であるわけではありません。

 なぜなら、現代の若年層が感じているものは、「職場に対する不満」ではなく、「成長できないという不安」にあるからです。現代の若者は、働きやすい楽な職場を求めているわけではありません。むしろ、自らの能力を伸ばし、キャリアを通じて成長できる職場を求めているのです。

若者たちが求めているもの

 この話から、単純に負荷を上げればよいというわけではありません。単純に負荷を上げるだけでは、今度は職場の待遇が悪いと捉えられ、若年層の社員は離職します。

3つの負荷の種類

 問題を解決するには負荷の種類を先ず知ることです。負荷には「量的負荷」、「質的負荷」、「関係負荷」という3つがあります。

 「量的負荷」とは労働時間の長さや仕事の多さに関する負荷を指します。

 「質的負荷」とは業務の難しさや新しい知識を学ぶ必要性に関する負荷を指します。

 「関係負荷」とは人間関係に起因するストレスに関する負荷を指します。

 この3つに対し、取り除くべき負荷と与えるべき負荷を知ることが重要です。そして、そのバランスを保つことが職場には求められています。

仕事の質的負荷を与え、人間関係に起因する負荷は取り除く。

 先ずは、「関係負荷(人間関係のストレス)」を減らすことです。風通しの良い職場風土を醸成し、上司やチームメンバーと協力しやすい環境を作りましょう。社内対応でストレスや負荷を感じるような職場環境では、社外にいる顧客に対して価値を提供出来ません。

 一方で、「質的負荷(仕事の質を高めるストレス)」は上げる必要があります。質的負荷の向上に取り組んでいけば、必ず本人の成長につながるからです。

 「量的負荷」は相手の能力に対して、コントロールしましょう。多過ぎても少な過ぎても駄目です。

質的負荷と関係負荷でのジレンマ

 質的負荷の向上には、教育と指導が欠かせません。しかしながら、昨今はハラスメントの防止が求められているため、新人の失敗に対して叱責しないという状況が起こっています。興味深いことに、2019年から2021年にかけての新卒の若者の約1/4が一度も「叱責」された経験がないというデータがあります。これは、現代の新入社員が直面している環境を示しています。

 やはり、失敗をした時には叱責(教育や指導)は必要です。感情的に怒ることはダメですが、間違ったことを叱らないことは、かえって新人の不満につながります。叱られることによって、自分を振り返り、正しい行動とマインドを得て人は成長します。以前は多くの人が当たり前に通ってきた道です。

 しかし、職場環境の向上とハラスメント回避の方針が、別の弊害を生んでいます。

叱責には相互信頼が前提

 しかし、ただ叱責すればよいという単純な構造ではありません。誰しも尊敬できない相手からの叱責には耳を貸しません。部下から信頼されていて初めて意味を持ちます。そして、部下からの信頼は日頃の行動の積み重ねによってのみ獲得できます。

 信頼関係があれば叱責後に関係が崩れることもありません。そして、相手が一時的に嫌な気分を持っても、後々冷静に考える場面が来るものです。そして、その叱責に本当に意味があれば、新人といえどもきちんと理解できます。

質的負荷を向上させるその他の施策

 若年層(新人)が職場で成長し、満足を得るためには質的負荷の向上は欠かせません。叱責や指導といった方法以外で、質的負荷を向上させる策もあります。

横のつながりを通じて成長を促す

 同年代の従業員同士の交流を促し、お互いに学び合う機会を提供することです。若手のみ、または若手が多い組織をあえて作ることも有効です。

 経験不足の観点から、始めは具体的な目標と期限は上司が定めても良いでしょう。ただし、その後には責任と共に権限を渡すことが重要です。同世代間で学び合い、競争させることは自然な成長の機会を作り出すことが出来ます。

社外での学びを生かすして成長を促す

 社外研修や私生活で得た知識を職場で活かせるような仕組みや風土を整えることです。

 若年層が学んだことを職場で活用できるような風土や仕組みがあれば、若年層の学習モチベーション向上につながります。若年層が取り組む中で行う、トライ&エラーは必ず本人への成長につながります。

新しい価値観を受け入れる

 若年層(新人)にとって好条件の職場というものは、従来の価値観だけでは測れません。

 そのため、我々が知るべき点は、我々と若年層では価値観が大きく変わっていることです。その価値観の違いを認め、受け入れることが先ずは重要です。その後、若年層(新人)にとって好条件となる環境を構築することが重要です。

 その一つが、「成長できると実感できる環境」の提供です。この様な取り組みを行うことによって、若年層(新人)は職場への満足度を高め、離職という選択をとらなくなるはずです。

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