様々な部下とどう関わるか? -タイプ別分類-

部下とのかかわり方

始めに

 組織の中でマネジャーやリーダーは、様々な性格や能力を持つ部下と関わる必要があります。部下一人ひとりの能力を理解し、それを最大限に引き出すことが組織全体の成功へとつながります。しかし、部下にも様々なタイプが存在するためどのように関わることが良いかという点は難しい問題です。

 今回は1つの方法として、部下を「やる気」と「能力」の二つの軸で分類し、それぞれのタイプに合わせた最適な対応方法を考えます。

 例えば、高い能力を持ちながらやる気が低い部下とどう関わるべきか? 逆に、やる気はあるがまだ能力が伸びしろのある部下とどう関わるべきか? 等を考えます。部下のタイプを簡単なフレームワークで分類することによって、部下との関りの大きな方針を決めることが出来ます。結果として、効率的なマネジメントと育成が可能になります。

本記事のポイント

部下を「やる気」と「能力」の2軸で分類し、どこに位置付けられるかを確認するそれによって、部下毎にどのように関わるかの大きな方針が分かる

分類は現時点のもどであって変化することを理解する。マネジャーやリーダーは各部課がより高い分類を目指せるように支援していくことが重要である。

記事を活かすために実践すること

自分の部下を「やる気」と「能力」の2軸で分類し、どこに位置付けられるかを確認する。それを基に部下とのかかわり方を変えていく。

部下との関わりで忘れてはならないこと

 上司は各部下の能力を最大限に引き出し、組織全体の成果向上につなげることが重要です。部下を知り、関係構築をするためには時間と努力が必要です。しかし、部下のポテンシャルを理解し、適切に対応することが組織の持続的な成長に不可欠です。

 部下のタイプは現時点での分類にすぎません。そのため、部下がより上位にステップアップしていくため、継続的支援が必要なことを忘れてはいけません。

「やる気」と「能力」で部下を見極める

 部下との関わりを考える際には、その人の「やる気」と「能力」の2軸を考えることが重要です。この2軸で部下を評価することにより、各個人の特性に応じた基本的な関わり方が分かります。

 以下では、この2軸を使用して部下を4タイプに分類します。それぞれについて、上司としてどのように関わるべきか、そしてどのような仕事を任せると良いかについて考えていきます。

高能力×高やる気(スタープレイヤー)

位置付け

 このタイプの部下は、組織内でリーダーシップを取ることができる主要メンバーです。戦略的な意思決定に参加させることで、彼らの能力とモチベーションを最大限に活用することが大切です。

関わり方

 スタープレイヤーは自主性を尊重されることでさらに成長します。そのため、適切なフィードバックと挑戦的な目標を設定しましょう。その後は、彼ら自身の能力を存分に発揮できる環境を提供しましょう。新しいプロジェクトのリーダーを務める機会等は非常に有効です。

任せる仕事

 基本的には責任を与え、仕事を委任することが良いでしょう。

例)新規プロジェクトのリード、重要な顧客との交渉、部門の目標達成を左右するキープロジェクトの担当。

高能力×低やる気(潜在能力あり)

位置付け

 能力は高いがモチベーションが低い部下は、適切な動機付けが必要です。もし、動機づけに成功すれば大きな貢献を期待できるポテンシャルを持っています。

関わり方

 このタイプの部下は、彼らの興味や情熱を引き出すことが最重要です。希望するプロジェクトや役割を与えられるように考えましょう。また、彼ら個人の目標設定のサポートやキャリアアップにつながる機会を提供することも有効です。これによって内面的なモチベーションを喚起することもあります。

任せる仕事

 基本的には責任を与えますが、一部の責任に限定することが好ましいでしょう。なぜなら、仕事を完全委任することは現時点では難しいからです。そのため、彼らのモチベーションを維持できるような支援を重視しましょう。

例)専門性を活かせるプロジェクト、特定のスキルを必要とする短期間の業務任命。

低能力×高やる気(成長途中)

位置付け

 やる気はあるがスキルが未熟な部下は、適切なトレーニングと経験を積むことでその能力を伸ばすことが可能です。新入社員に多く見られるタイプです。

関わり方

 このタイプの部下には、具体的なスキルアップのためのトレーニングを積極的に行いましょう。教育と指導を通して、着実な成長を支援することが重要です。また、小さな成功体験を積み重ねることで自信を持たせましょう。この積み重ねにより、徐々に難易度の高い仕事にも挑戦しようと気持ちは変わっていきます。仕事のレベルの引き上げながら、彼らの能力を引き上げていくことが良いでしょう。

任せる仕事

 基本的には責任は与えません。仕事を完全遂行することは難しく、責任を伴うと委縮してしまいます。また、万が一の失敗時にはモチベーションの低下につながります。伴走を基本として、彼らのモチベーションを維持できるような支援を重視しましょう。

例)経験を積むための基本的なタスク、簡単なプロジェクトのサポート、チーム内の協力的な役割。

低能力×低やる気(再評価が必要)

位置付け

 能力もやる気も低い部下は、状況を正確に理解し、適切な対策を講じましょう。時には職務の再配置やキャリアパスの見直しが必要です。

関わり方

 このタイプの部下には、個別の面談を通じて彼らの職業的な興味や問題点を掘り下げることが必要です。例えば適切な動機付けや新たな目標設定を試み、職場での彼らの役割を再定義することが一つの手段です。関わりによって、モチベーションが向上する兆しが見られれば対応を変えていきましょう。しかし、変わる気配はない場合には時間を割くことは控えましょう。

任せる仕事

 責任は与えません。モチベーション向上を期待して、1 on 1などの対話を通して、質問によって自身を振り返らせる働きかけが重要です。変わるか否かが重要です。変化の兆しが見られなければ、職務の再配置やキャリアパスの見直しを提案しましょう。

各タイプのかかわり方

 上司が各部下にかけるべき時間は個々の部下のポテンシャルに大きく依存します。どの部下に時間をかけるべきか、その理由と共に纏めます。

高能力×高やる気(スタープレイヤー)

時間

 適度に時間をかける(優先度2)。放っておくと後回しになってしまうため、意識的に時間をとるようにする。

理由

 スタープレイヤーは自律性が高く、少ないサポートで高い成果を出すことが可能です。しかし、持続的に成果を上げ続けるためには、彼らの内的モチベーションを燃やし続ける必要があります。そして能力に合わせた挑戦的なプロジェクトや昇進の機会を考える必要があります。

高能力×低やる気(潜在能力あり)

時間

 適度に時間をかける(優先度3)。

理由

 このタイプの部下は、正しい動機付けがされれば大きなポテンシャルを発揮する可能性を秘めています。彼らの興味や情熱を理解し、それに応じた役割を与えることで、やる気を引き出し組織への貢献を促すことができます。
 しかし、やる気を外的な働きによって改善させることは簡単ではありません。個人の気持ちに大きく依存します。そのため、適度な頻度でかかわりを持ちましょう。

低能力・高やる気(成長途中)

時間

 最も多くの時間をかける(優先度1)。

理由

 適切な教育とサポートを受けることで大きく成長できるため、時間をかける価値が最もあります。やる気は本人の意思に左右されますが、能力は外的な働きかけで向上させることが出来ます。そのため、継続的な指導や教育とフィードバックを通じてスキルアップを促しましょう。
 長期的に見れば、この層が次世代のスーパースターであり、組織の人材育成上で最も重要です。

低能力・低やる気(再評価が必要)

時間

 掛ける時間は限定する(優先度は最も低い。優先度4)。


理由

 このタイプの部下には、その状況を改善するための「やる気」と「能力」という2つのハードルをクリアする必要があります。そのため、時間をかけて成功する見込みは最も低いといわざるを得ません。限られた時間を考えるならば、最低限のかかわりに抑えるべきといえます。
 個別の面談でまず現状の根本原因を特定し、改善の余地があるか評価しましょう。改善の可能性が低いと判断した場合は、他の部下にリソースをシフトしましょう。

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