本コンテンツの結論
・仕事に関して下記の前提が広く受け入れられていますが、それらは全て間違いです。
1. どの会社で働くかが最も重要である
2. 計画の完璧さが成功を決める
3. 目標設定は重要である
4. オールラウンダーこそ最強の人材である
5. 人はフィードバックを求めている
6. 人間は他人を正しく評価できる
7. 人にはポテンシャルがある
8. ワークライフバランスが最重要である
9. リーダーシップという普遍スキルが存在する
学びを身に付けるために実践したいこと
難易度 1: 簡単に始められる行動
1. 自分の所属するチームの状態に意識を向ける。チームの成功に向け、チーム内の協力やコミュニケーションが促進されるように働きかける。
2. 計画に柔軟性を持たせることを心掛ける。予期せぬ変更に対応できるように、計画を修正できる習慣を身につける。
3. 目標に意味を持たせるために、目標に対して「なぜそれを達成したいのか」を考えメモに残し、目標達成の意義を明確化する。
難易度 2: 少し努力が必要な行動
4. 自分の強みと弱みを洗い出し、どの分野で優れた能力を発揮できるかを考える。強みを活かせる機会を積極的に探す。
5. 同僚や部下に対する肯定的なフィードバックを意識的に提供する。
6. 他人からの評価を受ける際に、複数の意見を収集し、全体像を理解する努力をする。単一の評価者の意見に偏らず、客観的な視点を持つ。
難易度 3: 継続的な努力が必要な行動
7. 現在の成果や能力だけでなく、将来の潜在能力を評価する文化を育てる。新たな人材の採用や昇進の際に、将来性を考慮するよう努力する。
8. 仕事の中で好きな要素を見つけるために、興味を持つ分野やプロジェクトに参加する。楽しみながら仕事に取り組める方法を探し続ける。
9. 自分の不完全さを認める。その上で、トレーニングを重ねリーダーシップのスキルを磨く。またチームのメンバーへの信頼と敬意を常に心にとどめておく。
コンテンツ本文
企業内で広く定着している慣行には実は全くの誤りであるものが多くあります。ここでは、広く信じられているが、間違っていると思われる代表的な9つの誤解を取り上げます。
嘘1: 「どの会社で働くかが重要」の真実
外部から見て、ある会社での働き方を完全に理解するのは不可能です。企業文化は、企業から提供される情報やプレスリリースによって理解されがちですが、実際には個々の裁量でできることは限られています。
重要なのは、どの会社よりも、どのチームで働くかです。チームのばらつきは、会社間よりも会社内で大きく、このことが個人のやりがいや幸福感に大きく影響します。リーダーにとって重要なのは、良いチームの構築と、チームをメンバーにとって居心地の良い場所にすることです。
嘘2: 「最高の計画があれば勝てる」の真実
計画は重要とされていますが、現実には計画通りに進むことは稀です。現実世界の情報が計画には足りず、理想が多く含まれることがあるためです。
大切なのは情報を組織全体にできるだけ早く行き渡らせ、迅速できめ細かな対応をすることです。最高の計画があれば勝てるというのは嘘であり、本当は最高の情報があれば勝てるということです。そして、その情報を元に柔軟に対応していくことが確実な勝利に繋がります。情報の真の価値は上の階層に行くほど判断が出来ません。重要な判断は現場のメンバーに任せることが重要です。現場で情報を基に柔軟に行動していくことが重要です。
嘘3: 「最強の企業は目標を連鎖させる」の真実
目標設定は管理上便利ですが、生産性向上に必ずしも貢献するわけではありません。
例えば、特定の条件を設定すると、それ以上の努力をしなくなることや、設定された上限がプレッシャーとなり、メンバーのモチベーション低下やストレスの原因にもなります。過剰な目標設定は不正行為の温床になることもあります。目標の進捗率に関しても、実際には30%や80%といった数値に意味はなく、達成か未達成のみが重要です。
良い目標とは
良い目標であるかの唯一の判断基準は、その目標を追求する人が自発的に設定したかどうかです。最高の企業は、目標を落とし込むのではなく意味を落とし込みます。なぜなら、意味と目的が明確であれば、人は自ら歩みを進めることができるからです。リーダーの仕事は、働く意味と目指す方向を考えることです。受け手に効果的に伝わるような工夫としては、価値観の表明、繰り返し伝えること、言葉を物語にすることなどがあります。これらの方法で、人々の記憶に残るようにすることが大切です。
嘘4: 「最高の人材はオールラウンダーである」という誤解
多くの企業は、あらゆる活動を行うオールラウンダーを重要視していますが、これは誤った認識です。尖った能力を持つ人材は、しばしば評価されず、モチベーションを喪失し、その結果として成果の質が低下することがあります。
自己成長とは?
完璧な人間を想像することは簡単ですが、成長とは欠けている能力を獲得することではなく、既に持っている能力のインパクトをどれだけ高めるかと考えた方が良いでしょう。全くできない能力があったとしても、それが会社の業務において本当に問題となるかどうかも考慮すべきです。最低限必要な資質というものは存在しないかもしれません。
優れた成果を出すためには、個人の強みに焦点を当てる必要があります。強みとは、単に得意なことだけでなく、やりがいを感じさせる活動です。これは能力よりもむしろ内なる欲求に近く、その活動を継続することで卓越したパフォーマンスを生み出します。
組織として取り組むこと
足りない能力があるならば、その能力を仕組みによって補う、または他の人ができるように仕組みを変えることが重要です。目指すべきなのは、オールラウンダーを育てるのではなく、卓越した人材を組み合わせることによって、組織全体の総合力を高めることです。
嘘5: 「人はフィードバックを求めている」という誤解
適度なフィードバックは必要ですが、過剰なフィードバックは組織活動を妨げることがあります。フィードバックは、評価者と被評価者の間にバイアスを生じさせることがあるため、常に正確ではありません。
部下とのかかわり方
エンゲージメントを高めるためには、部下に関心を払うことが重要です。しかし、ネガティブなフィードバックを与えることは、従業員のモチベーションを低下させる可能性があります。彼らが求めているのは、ポジティブな点に注目されることでの満足感です。
実際、ポジティブな注目はネガティブな注目よりも30倍の効果があり、無視することよりも1200倍の効果があるとされています。
適切なフィードバック
成長する方法は一人ひとり異なり、その速度も異なります。部下のうまくいかなかった部分を指摘するよりも、うまくできた点に注目し、賞賛を与えることで、チームメンバーの能力は向上します。そして、相手が卓越した成果を出した際には、それを素直に賞賛することが重要です。賞賛と指摘のバランスは4対1が望ましいです。また、自分で考える習慣を持たないと成長は難しいです。相談を受けた時には、まずうまくいっていることを3つ挙げさせ、うまくいかなかった部分については過去の経験を参考に考えさせることが効果的です。
嘘6: 「人は他人を正しく評価できる」という誤解
部下を正しく評価することは困難であり、各マネージャーが異なる基準で評価することが一貫性の欠如をもたらします。
先入観の影響
人は自分に近い人を高く評価する傾向があります。これは、自分と異なる性格の人を相対的に低く評価することを意味します。評価者の見方は、対象者の評価に対して約54%の先入観として影響を与えることが研究で明らかになっています。評価者のバイアスにより、正確な評価が難しくなることがあります。複数の意見を取り入れることで、より正確な評価を得ることができますが、評価者が多くなると、平均的な評価に偏るリスクがあります。
嘘7: 「人にはポテンシャルがある」という誤解
ポテンシャルは将来的な結果に対して用いられる言葉ですが、現時点での将来性を判断することには問題があります。現状の成果や能力に基づいて分析されることが多く、人柄を考慮することも問題視されます。例えば、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズのように、日常的に異質に見える人も、将来的には大きな価値をもたらす可能性があります。革新性は、真に考慮すべきポテンシャルです。人当たりや現在の実績で将来性を判断するのは、革新性を見過ごすことにつながります。
現評価の問題点
人となりや現在の実績で将来のポテンシャルを測ることは誤った方法です。この方法では、人当たりの良い少し能力のある人材を採用する結果になります。組織内のスコアは、現在の組織リーダーに似ている人が高く評価される傾向にあります。その意味で現在多くの会社でポテンシャルといわれている評価事項はあまり意味がありません。
嘘8: 「ワークライフバランスが最重要」という誤解
労働の本質は、時間と才能を売って見返りとして対価を得る取引です。ワークライフバランスでは、仕事が悪で私生活が善という謎のコンセンサスが前提となっています。
「好きなことを仕事にすれば、一生仕事をする必要はなくなる」というアドバイスがありますが、現実には多くの人にとって好きなことでも仕事には苦が伴います。それならば、現在の仕事に好きな点を見つける方がより建設的です。
本当にとるべきバランス
仕事を好きになるべきであり、会社や組織に重点を置きすぎてはなりません。また、好きなことが仕事の一部であればそれは幸せな時間となり、私生活で嫌いなことがあればそれは不幸な時間となります。取るべきバランスは仕事と私生活ではなく、好きなことと嫌いなことの間です。
嘘9: 「リーダーシップというものが存在する」という誤解
リーダーシップは多様な定義が存在するにも関わらず、すべてを兼ね備える人はいません。人を導く力は特別なもので、万人が容易に伸ばせる能力ではありません。優れたリーダーは、特定の特性を組み合わせてリーダーシップを発揮します。そのため、リーダーによってリーダーシップのスタイルは大きく異なります。
リーダーに求められるもの
重要なのは、チームメンバーが求めるリーダーシップに応え、フォロワーを導くことです。リーダーは、不確実性のある未来に対して鮮明なビジョンを示し、フォロワーへ安心感を与え、それらにどのように対応するべきかを示すことが重要です。